【2026年8月改正】高額療養費の自己負担上限はいくら上がった?70歳以上の外来特例と新設された「年間上限」を解説

公開日:2026.09.30

2026年8月の高額療養費制度の改正。70歳以上の外来特例は月8,000円から11,000円へ、多数回該当は据え置き、年間上限を新設

2026年8月の診療分から、高額療養費制度の自己負担限度額が見直されました。入院や手術で医療費が高額になったとき、払い戻しの対象となる「ひと月あたりの上限額」が上がっています。70歳以上の外来の上限(外来特例)も引き上げられました。

ただし、今回の見直しは「負担が増えるだけ」ではありません。長期療養者への配慮として「多数回該当」の金額は据え置かれ、新たに「年間上限」が設けられました。人によっては、これまでより負担が軽くなる場合もあります。

この記事では厚生労働省の公表資料をもとに、何がどう変わったのかを整理します。あわせて、愛知県の後期高齢者医療のデータから、医療費が家計にどれくらいの重さで乗ってくるのかを見ていきます。

※本記事は厚生労働省・愛知県後期高齢者医療広域連合・総務省統計局・日本年金機構が公表した資料にもとづき、2026年9月17日時点で確認できる内容をまとめたものです。個別の適用可否や金額は、加入されている医療保険の保険者(市町村の国保窓口、後期高齢者医療広域連合、健康保険組合、協会けんぽなど)にご確認ください。

目次

そもそも高額療養費制度とは

高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重にならないよう、ひと月の自己負担が一定額を超えた分について、あとから保険者から払い戻される仕組みです。自己負担限度額は加入者の所得に応じて決められています。

入院の場合は、医療機関の窓口での支払いを最初から限度額までにとどめる仕組み(現物給付化)が導入されています。外来でも、2012年4月から同一の医療機関で限度額を超える場合は同様の扱いになっています。

見直しは2026年8月と2027年8月の2段階

厚生労働省の資料によると、今回の見直しは次の2段階で実施されます。

  • 令和8年(2026年)8月の診療分から:月額の自己負担限度額の見直しと、「年間上限」の導入
  • 令和9年(2027年)8月から:所得区分の細分化(所得に応じた負担のきめ細かい設定)

70歳以上の自己負担限度額は、いくらからいくらになったか

ココスムをご覧の方に関係が深い、70歳以上の区分を中心に整理します。「外来(個人ごと)」は、通院だけの場合に適用される上限額(外来特例)です。

住民税非課税世帯の外来上限は8,000円から11,000円、2027年8月に13,000円へ。所得が一定以下の区分は8,000円で据え置き
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」をもとにココスムが作成
所得区分(70歳以上)項目見直し前2026年8月〜2027年8月〜
住民税非課税(所得が一定以下)月額上限15,000円15,700円
(年間上限180,000円)
15,700円
(年間上限180,000円)
外来(個人ごと)8,000円8,000円(据え置き)8,000円(据え置き)
住民税非課税月額上限24,600円25,700円
(年間上限290,000円)
25,700円
(年間上限290,000円)
外来(個人ごと)8,000円11,000円
(年間上限96,000円)
13,000円
(年間上限96,000円)
〜年収約200万円月額上限57,600円61,500円61,500円
外来(個人ごと)18,000円
(年間144,000円)
22,000円
(年間216,000円)
22,000円
(年間216,000円)
年収約370万円〜約770万円月額上限80,100円+1%85,800円+1%85,800円+1%

※「+1%」は、医療費が一定額を超えた分の1%を加算する計算です。上表は主な区分の抜粋で、実際の区分はより細かく設定されています。

年金生活の方に関係が深いのは、住民税非課税世帯の外来の上限が月8,000円から11,000円へ、2027年8月にはさらに13,000円へ引き上げられる点です。一方で、所得が一定以下の区分では外来8,000円が据え置かれており、いちばん所得が低い層には配慮がなされています。

ご自身がどの所得区分に当てはまるかを知らないままでは、影響の大きさを判断できません。

負担が軽くなる仕組みも同時に入っている

「多数回該当」の金額は据え置き

多数回該当とは、年に4回以上高額療養費に該当した場合に、4回目以降の自己負担をさらに軽くする仕組みです。厚生労働省は「長期に継続して治療を受けられている方の経済的負担を増加させない」として、この金額を据え置きました。たとえば年収約370万円〜約770万円の区分では44,400円、住民税非課税では24,600円のままです。

新たに「年間上限」が導入された

今回の見直しの目玉が、年単位の上限額の新設です。月ごとの自己負担が積み上がっても、年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費の支払いが不要になります。

これは、毎月コンスタントに医療費がかかるものの、多数回該当の条件には当てはまらなかった方への配慮です。厚生労働省の資料では、そうした方の負担が年間で約23.7万円軽くなる例(自己負担76.7万円→53.0万円)が示されています。

自己負担を1年分積み上げ、年間上限に達するとその年はそれ以上支払わなくてよくなる仕組みを示した累計グラフ
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」をもとにココスムが作成(グラフはしくみを示すイメージ図です)

今回の改正は「全員が負担増」ではなく、療養の続き方によって影響が分かれます。

愛知県の現実|後期高齢者の一人当たり医療費は年100万円台へ

制度の話を、愛知県の実際の数字と重ねてみます。愛知県後期高齢者医療広域連合の「事業概況(令和8年度版)」によると、県内の後期高齢者医療の被保険者数は令和7年度末で1,144,231人。令和3年度末の1,007,295人から、5年間で約13.7万人増えました。

そして一人当たり医療費は、令和7年度に1,000,541円と年間100万円台に乗りました。令和2年度は919,273円でしたから、5年間で約8万円増えています。

愛知県の後期高齢者医療の一人当たり医療費は令和7年度に1,000,541円。名古屋市1,082,990円、安城市875,967円など市町村別の比較
出典:愛知県後期高齢者医療広域連合「愛知県後期高齢者医療の事業概況(令和8年度版)」をもとにココスムが作成

市町村によって差がある

市町村令和2年度令和7年度
愛知県 合計919,273円1,000,541円
名古屋市991,355円1,082,990円
一宮市961,829円1,066,810円
稲沢市918,000円1,032,163円
津島市893,026円1,015,637円
春日井市888,925円978,075円
豊橋市938,273円961,332円
豊田市883,026円938,501円
安城市794,241円875,967円

医療費は、住んでいる地域によっても差があります。

名古屋市が最も高く、安城市とは年間で約20万円の差があります。ただしこれは医療費の総額(保険給付分を含む)であって、窓口で払う自己負担額そのものではありません。愛知県の各エリアの住宅事情については春日井市で持ち家をどうする?高蔵寺ニュータウンの高齢化・空き家データから考える5つの選択肢でも扱っています。

県内の後期高齢者の35.4%が住民税非課税世帯

同じ資料で所得区分別に見ると、令和7年度末時点で低所得Ⅱが266,551人(23.30%)、低所得Ⅰが138,083人(12.07%)。合計404,634人、被保険者全体の35.37%が住民税非課税の区分です。今回の外来特例の引き上げ(月8,000円→11,000円→13,000円)が関係するのは、まさにこの層にあたります。

年金の額と並べて考える

医療費の負担増がどれくらいの重さなのかは、収入と並べないと実感できません。

日本年金機構によると、令和8年度の老齢基礎年金は満額で月70,608円、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む厚生年金の標準的な年金額は月237,279円です。一方、総務省統計局の家計調査(2025年平均)では、65歳以上の夫婦のみ無職世帯は毎月42,434円の赤字、単身無職世帯は29,980円の赤字となっています。

この状態で、外来の上限が月8,000円から11,000円に上がると、毎月上限まで使う方では月3,000円、年間で36,000円の増加になります(住民税非課税区分には年間上限96,000円が設けられているため、年間の最大負担額はこれまでと変わらない設計とされています)。金額としては大きくないように見えても、すでに毎月赤字の家計では、その分だけ貯蓄の取り崩しが早まるということです。

老後の生活費全体については老後資金が足りないと感じたら?持ち家を活用して生活を守る5つの方法、介護費用については介護費用が心配なら?自宅を活用してリースバックで資金を確保する方法で解説しています。

いま確認しておきたい3つのこと

① 自分の所得区分を知っておく

高額療養費の上限額は所得区分で決まります。後期高齢者医療の方は毎年送られてくる被保険者証や決定通知で、国民健康保険の方は市区町村の窓口で確認できます。区分がわかって初めて、今回の改正が自分にどう影響するのかが判断できます。

② 窓口での支払いを上限までにとどめる手続きを確認する

高額療養費は「あとから払い戻し」が原則です。事前に手続きをしておけば、窓口での支払いを最初から限度額までにとどめることができます。マイナンバーカードを健康保険証として利用する場合や、限度額適用認定証を使う場合など、方法は加入している保険によって異なります。入院が決まったら、入院前に保険者へ確認しておくと立替の負担を避けられます。

③ 高額療養費でカバーされない費用があることを知っておく

差額ベッド代、入院中の食事代の一部、先進医療の技術料、おむつ代、家族の交通費などは高額療養費の対象外です。実際の入院では、限度額を超えた分が戻ってきても、手元から出ていくお金はそれだけではありません。

まとまった現金をすぐ用意できるかどうかは、制度とは別に考えておく必要があります。

医療費への備えとして、持ち家をどう位置づけるか

医療費に備える方法は複数あります。持ち家のある方にとっては、自宅も選択肢の一つになります。ただし優劣があるわけではなく、それぞれ性質が違います。

方法用意できる金額時間注意点
預貯金の取り崩し貯蓄の範囲すぐ取り崩すほど将来の備えが減る
医療保険・がん保険給付内容による請求から数日〜支払事由に該当するかは契約内容次第
家族からの援助状況による状況による関係性への配慮が必要
不動産担保ローン・リバースモーゲージ担保評価に応じた額審査あり年齢・物件・収入の条件と、利息の負担
自宅の売却市場価格に近い額数か月引っ越しが必要
リースバック買取価格(一般に市場価格より低め)比較的早い住み続けられるが家賃が発生する

リースバックは「引っ越さずに、まとまった資金を比較的早く用意する」という点に特徴がありますが、ローンの返済がなくなる代わりに家賃が発生します。年金の範囲で払い続けられる水準かどうかが判断の分かれ目です。国土交通省住宅局・不動産業課の解説(国民生活センター『国民生活』2025年10月号)では、事業者へのアンケート回答として、買取価格は相場の6〜7割程度、家賃は売却金額を踏まえて決定されるという実態が示されています。

各方法の詳細はリースバックとリバースモーゲージの違い、不動産担保ローンとリースバックの違い、家賃の考え方はリースバックの家賃相場は?をご覧ください。手続きの流れはリースバックの流れを徹底解説にまとめています。

医療費が心配だから自宅を手放す、という順番で考える必要はありません。

まず制度を確認し、次に自分の数字を出す

2026年8月の改正で、70歳以上の外来の上限は住民税非課税世帯で月8,000円から11,000円へ、2027年8月には13,000円へ。一方で多数回該当は据え置かれ、年間上限が新設されました。愛知県の後期高齢者の一人当たり医療費は令和7年度に100万円台に乗り、被保険者の35.37%が住民税非課税の区分にあります。

最初にすべきは、ご自身の所得区分と、窓口での支払いを上限までにとどめる手続きの確認です。そのうえで「まとまった現金をすぐ用意できるか」という問いが残るなら、そこで初めて資産の使い方を考える段階になります。

ココスムを運営する株式会社YOKOYAMAは名古屋市に本社を置き、愛知県の不動産を専門に扱っています。「自宅がいくらで、リースバックにした場合の家賃はいくらか」という数字は、選択肢を比べるための材料としてお出しできます。査定を受けたからといって契約する義務はありません。ご家族と一緒にご相談いただくこともできます。

よくある質問

2026年8月の改正で、私の負担は増えるのでしょうか?

所得区分と、医療のかかり方によって変わります。月ごとの上限額は多くの区分で引き上げられましたが、年に4回以上高額療養費に該当する「多数回該当」の金額は据え置かれ、新たに年単位の上限額も設けられました。毎月コンスタントに医療費がかかるものの多数回該当に当てはまらなかった方は、むしろ負担が軽くなる場合があります。ご自身のケースについては、加入している保険者(市区町村の国保窓口、後期高齢者医療広域連合、健康保険組合など)にご確認ください。

「年間上限」とは何ですか?

月ごとの自己負担が積み上がっていったとき、年間の上限額に達した後はそれ以上の支払いが不要になる仕組みです。2026年8月から新たに導入されました。たとえば70歳以上の住民税非課税区分では年間290,000円、外来については年間96,000円といった上限が設けられています。月単位の限度額に届かない方でも、年間で見ると負担が重くなるケースに対応するための仕組みです。

入院費をいったん全額払う必要がありますか?

事前に手続きをしておけば、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができます。マイナンバーカードを健康保険証として利用する方法や、限度額適用認定証を事前に取得する方法があり、加入している保険によって手順が異なります。入院が決まった段階で保険者に確認しておくと、一時的な立替が不要になります。手続きをしていない場合は、いったん窓口で支払い、あとから払い戻しを受ける流れになります。

高額療養費の対象にならない費用にはどんなものがありますか?

差額ベッド代(個室などを希望した場合の室料差額)、入院中の食事代の一部、先進医療の技術料、おむつ代、通院や見舞いの交通費などは対象外です。高額療養費はあくまで保険が適用される診療の自己負担を対象とする制度のため、実際に手元から出ていく金額は限度額だけにとどまらない点に注意が必要です。詳細は医療機関の相談窓口や保険者にご確認ください。

医療費のためにリースバックを利用する方はいますか?

ご相談としては、手術や入院、施設への入居などでまとまった資金が必要になり、預貯金だけでは足りないという理由で検討される方がいらっしゃいます。ただし当社は、医療費が心配だからという理由だけで自宅の売却をおすすめすることはありません。まずは高額療養費の手続き、公的な貸付制度、ご家族との相談といった順序で検討していただき、そのうえで自宅の活用が選択肢になる場合にご相談ください。買取価格と家賃をセットでお示しし、ご希望に沿わない場合はその旨も率直にお伝えします。

まとめ

  • 2026年8月の診療分から、高額療養費の月額自己負担限度額が見直されました。2027年8月には所得区分の細分化という第2段階が予定されています。
  • 70歳以上・住民税非課税世帯の外来の上限は月8,000円から11,000円へ、2027年8月には13,000円へ。所得が一定以下の区分では8,000円が据え置かれています。
  • 一方で「多数回該当」の金額は据え置かれ、新たに「年間上限」が導入されました。長期療養の方は負担が軽くなる場合もあります。
  • 愛知県の後期高齢者医療の一人当たり医療費は令和7年度に1,000,541円と年間100万円台に。被保険者の35.37%が住民税非課税の区分です。
  • まず確認すべきは自分の所得区分と、窓口負担を上限までにとどめる手続きです。資産の活用を考えるのは、その次の段階です。

「まとまった現金をすぐ用意できるか」という問いが残ったときに、自宅がいくらで家賃がいくらになるのかという数字をお出しします。

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